第14章 温泉旅行へ*1日目夜編*
「ご馳走さまでした」
こいつ、満足そうに笑いやがって。
胸が苦しくなるほどの愛しさが政宗を襲う。桜の笑顔は心臓に悪い。可愛すぎる。
「政宗…?」
戸惑うような声にはっとする。目元に、触れていた。
「っ…ちゃんと、冷やしとけよ」
「…うん…」
ばっと手を離して、取り繕う。
「じゃあ、俺は行く」
「え、もう?」
「何だ、傍にいてほしいのか?」
余裕に見せかけて笑えば、桜が頬を染める。
ああ、やばい。このままここにいたら、何をしでかすか。
「ゆっくり眠れよ」
「ありがとう、政宗。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
だから、その顔で笑うのをやめろ。
お盆をひっつかみ、逃げ出すように部屋を出た。襖をストンと閉めてから、大きなため息。
「…拷問か」