第13章 温泉旅行へ*1日目午後編*
「とりあえず、食いましょう。いつ戻るか分からない者を待っていても仕方ありません」
御館様を宥めて、何とか食事が始まった。
美味しくない。
…というより、味が分からない。
周りが目を尖らせているのにも、もちろん参るが。戻るはずの時間になっても、桜が他の男と二人で逢瀬を楽しんでいるという事実が、ぐいぐいと精神を抉る。
光秀に持っていかれるのでは。
ちらりとでもそんな事が頭をよぎったが最後、もうその考えに取りつかれる。順番に、とはいえ、それは全て桜次第だ。途中で誰かを選ぶことだってある。
それにもし、すでに桜が密かに誰かを想っていたとしたら。まあその場合は、そいつ以外には端から勝ち目がないということになるのか。
味気ない飯を作業的に腹におさめ、皆も食事を終えた頃。正次がすっと広間に入ってきて、俺の横に来た。
「秀吉様」
「なんだ」
「光秀様が、玄関にお待ちです」
「…はあ?」