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【イケメン戦国】紫陽花物語

第34章 キューピッドは語る Side:YouⅡ <豊臣秀吉>





「おお怖い」

「おい、さとみはどこ行ったんだ」



怖がるどころか、むしろ面白がるような声音の光秀さんの横から、政宗が私を探してるのが聞こえる。はっとして顔を出そうと足を踏み出した私を、秀吉さんがばっと腕を伸ばして止めた。




「さとみ、出て来なくていい。今のお前をこいつらに見せたくない」

「ほお…」

「へえ」




秀吉さんの言葉に唸る信長様と政宗。光秀さんの笑い声も聞こえる。見なくても分かる。この三人、たぶん今すごくニヤニヤしてる。

今の私を見せたくないって言うのがどういう意味か、良く分からないけど…どこかむず痒い。

そのまま隠れている方が恥ずかしい気がして、私は秀吉さんの袖を引いた。




「秀吉さん…私なら、大丈夫だよ?」

「っ…さとみ」




秀吉さんの横に並んだ私は自然と、皆の前に顔を出す形になって。先頭にいた信長様が納得したように頷いて、私の目元へと手を伸ばした。



「秀吉に泣かされたか」



けれど信長様のその手は、秀吉さんが私の腕を引いたことで空を切った。秀吉さんの行動に、その場にいた全員が驚いたように目を丸くしてる。

秀吉さん自身も、自分の行動が無意識だったみたいで、皆に負けず劣らずびっくりした顔してる。



「も…申し訳ありません、御館様!」

「別に構わん…手に入れた途端にこれか、下手な事をすると斬られかねんぞ。貴様らも気をつけろ」

「御意」



慌てる秀吉さんを放って、信長様は心底楽しそう。それに悪ノリするように光秀さんも笑ってて…収拾つかないよ、これ。



「秀吉さんで遊ぶのも結構ですけど、いい加減食事にしませんか。軍議が夜中になる」



同じ事を思ったのか、家康がぼそり。その言葉に全員がはたと我に返って、大広間へと戻る為に歩き出した。

それでも光秀さんや政宗は秀吉さんをからかうのを止めなくて、先頭はとっても騒がしい。その騒ぎから少し離れて最後尾を歩いてる家康の横に並ぶと、ちらりとその目が私を見た。



「愛想、尽かされないようにね」

「分かってるよーだ」



お互いいつも通りのやり取り。だけど…家康の顔は柔らかく微笑んでる。

本当に…ありがとう。

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