第20章 温泉旅行へ*秀吉エンド*R15
外からの鳥のさえずりに、秀吉は目を覚ました。腕の中にいる桜は、まだ寝息を立てていて、穏やかなその寝顔にほっとする。
布団をしっかりとかけてやってから、起こさないように額に口づけた。溢れる想いが、止まらない。
「桜、愛してる」
ぽつりと呟く愛の言葉。昨夜も何度も口にしたけれど、まだ言い足りない。何度触れても、何度抱き締めても、その欲は治まらない。
「…秀吉さん、起きてます?」
とんとん、と遠慮がちに叩かれる襖。
「ああ……あ」
反射的に返事をしてから、しまったと思う。
「すみません。今日城へ戻ったら………」
襖を開けた家康が、そのままの姿勢で固まる。静かに閉めようとするから、慌てて引き止めた。
「おい、家康」
「おれはなにもみてません」
「いや、これはちが…わないが、違うんだ」
「…は?」
何がどう違うというのか。うまく説明出来ない秀吉を一瞥する家康に、慌てて話題を変える。
「家康、傷に効く軟膏あるか?桜に」
「秀吉さん…まさか…」
「違うっ。あ」
顔色を変える家康に力一杯否定した瞬間、吉次を放ったまま寝てしまったことを思い出した。
その顔をじっと見て、家康は何かを納得した顔で一歩下がる。
「俺信長様に報告する事が出来たので失礼します」
「何を言う気だ?!ちょっと待てっ」
いつもの倍の速さで歩き出す家康を、慌てて追いかける秀吉の顔は、焦りながらもどこか晴れ晴れとしていて。
幸せな夢を見る桜のためなら、どんなことでも恐れはしない。
秀吉エンド 終