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【イケメン戦国】紫陽花物語

第15章 温泉旅行へ*2日目午前編*



今目の前にいる桜の事を、もっと知りたいと唐突に思った。そして三成自身の事も、もっと知ってもらいたい。

三成の唇には、いまだ桜の指の感触が残っていて。血が出ていることに慌てて何も考えていなかったけれど、もう少し桜の手に触れていたかったと、今になって思う。


この手で、あの髪に、頬に、身体に。
触れたら、あなたはどんな顔をするのでしょうね。



「桜様、私は」



桜が、三成を伺うように見る。これから発する言葉を予期しているかのように、桜の頬は赤いまま。

恋物語を読んだ時には半信半疑だった自分の想い。それが今、霧が晴れるように明確になっていく。



「以前から、あなたをお慕いしておりました」

「三成君…」



言葉にしてしまえば簡単なことだ。もっと前、三成自身が自覚する遥か前から、三成はこの女性の事が愛しくて堪らなかった。

自分の疑念がはっきりしたことと同時に、想う気持ちを桜に伝えられたことで、三成は満足していた。



「桜様、私はお返事を頂けなくても構いません」

「え…?」

「確かに、私を選んでいただけるのでしたらそれは最上の喜びですが…」



これまでにないほどの笑顔を桜に向けて、三成は桜の傷の無い方の手を優しく包み込む。



「私は何よりも、桜様が幸せに笑っておられる姿を心から望んでおります。ですから…隣にいるのが私でなくとも、構いません」



最後に一つ、嘘をついた。
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