第20章 家族というもの
トウェインさんに無理矢理衣服を整えられて、今度は彼に撫でられた。
「にしても、まさか蝶ちゃんの方からそんな風に言ってもらえるなんて思わなかったよ…可愛いなぁ本当に」
「デレデレしてんじゃねえよ変態野郎が」
「この世で君だけには言われたくないんだけどその言葉」
『…じゃ、じゃあ本当に来ちゃうんだ…っ?』
「うん、もう物件も決まってるよ。あとは引越しで…まあただ、そこだけがちょっとネックでね……こんなところから引き受けてくれるところも少ないし、このご時世…しかもあの横浜まで安全に確実に引越しなんかどうしたものかと思って」
組合の力を使えばいいはずなのだけれど、フランシスさんが暫く組織を動かすつもりはないだろうし…それに異能力で資産を失ってしまった今、組織をあげて動くほどの権力もないだろう。
それに移動先はあの横浜な上、今や異能力者が溢れるなんでもありなこの時代…そっか、それで引越しに移れなかったんだ。
『…じゃあ私が引越しさせたげる』
「絶対言うと思ったから隠してたんだけどなぁ…どうすんのさ中原君」
「プリン五十個な」
「それでいいの本当に!!?」
「蝶なら寧ろ泣いて感謝するぞ」
頭の中に思い浮かんだとろとろプリンの山から一瞬で思考を切り替えた。
『そ、それで!?トウェインさんが引越し予定の物件って?…………え?』
トウェインさんの持ってきた物件の資料…ご丁寧に英語版も用意されている資料には、なんともまあ可愛らしいサインが右下に書かれており…
『……ねえ中也さん、私これすごい見覚えある』
「奇遇だな、俺もだ」
『後ね?凄い見覚えあるんだぁこの部屋番号』
「流石だな蝶、気付いたか…俺も信じたくなかった」
「そ♪森さんが是非うちにって…君達の隣の部屋くれちゃうんだってさ♪」
「『あの人は本当に…っ!!!』」
私と中也、両方の脳内にヒラヒラと手を振って可愛らしいい笑顔を浮かべるデフォルメキャラされた首領の顔が思い浮かぶ。
「いつからだよその話!?聞いてねえぞ一言も!?」
「サプライズの方が面白いだろうからって言われてさぁ?内緒にしとくのを条件に入れてもらえることになったんだよね」
『緩すぎるよ首領…っ』
「蝶ちゃんが大喜びするだろうからってむこうから持ちかけられたよこの話…蝶ちゃんが貧血になって一緒に買い物してる時に」
