第19章 繋がり
結局織田作の用事は、中也さんへ色々と渡すものがあるという事で、渡された大きめの箱を運ぶついでにまた中也さんの家まで戻ってきた。
「…入らねえのか?」
『え…あ……お邪魔しま、す…』
「……昨日も言ったがなぁ…ここ、もうお前の家だぞ?自分の家に何挨拶してんだよ、するなら“ただいま”でいいだろ」
『で、もここ中也さんの「俺とお前の家だ、間違えんな」…』
住まわせてもらってるだけなのに。
どうしてそこまで言ってくれるのだろう、この人は。
「俺のこと、嫌じゃなければ家族みてえなもんだと思ってくれればいいんだよお前は…俺が言うんだから」
『…中也さんは……私の事、どんな風に思って…』
「あ?俺?……まだ俺もあんまり慣れてなくて実感は沸かねえが…一緒に過ごして笑えてりゃ、それが一番いいんじゃねえの?」
すっと胸に入ってきた。
家族だと思えばいい、そう明言はしなかったけれど、彼の思う関係というものがよく伝わったような気がする。
シンプルに、単純にまとめられてはいるけれど、確かにそんな関係が一番いい。
中也さんが笑顔になるのが、一番いい。
「何より蝶、お前笑ったら可愛らしい顔してっし愛嬌あんだから…………って、どうした…!?」
ボフンッ、と顔から煙を立ててショートした。
まただ、またなんか…変な感じ。
そんな事言われ慣れてないせいからかもしれないけれど、そういう風に言われると、照れるような余裕もなくって恥ずかしくなって、ドキドキする。
『あ…う、ぅ……ッ』
「なんでまた涙目になってんだよお前は!?俺今褒めたよな!!?」
『きゃぅっ…!』
大急ぎでここまで駆けてきた挙句に両頬に手を添えられてグイ、と上を向かされた。
擽ったい刺激に肩を跳ねあげたのと同時に変な声も出る上、目の前には中也さんの顔が迫ってくる始末。
な、なにこれ、脳が追いつかないこんなの。
「お、おい…?…なんで固まってんだ……?」
『あ、…っ、手、動かさな…ッ』
「!わ、悪い驚かせて……けど、本当にどうした?」
『……な、なんでも…』
「…こっちか?」
言ってから、床に膝をついてしゃがみ込んだ中也さん。
顔もそれに合わせて少し下を向かされて、下から中也さんが覗き込むような形になった。
なに…これ?
こっちの方が、なんか…余計に緊張してきちゃう。