第18章 縁の時間
『ん…む………っ』
「そう、あとこいつでしめだ!フルコース完食目前だぞ蝶!」
『……ッ………食べ…た……っ、食べた!!』
途中、ほぼ強制的に口の中に詰められながらもなんとか完食した夕食。
美味しさはやはり折り紙付きで、この中也がここまで移動してでも食べたかったというのにも頷けた。
食べきったら中也からよく食ったなぁ!!と嬉しそうにわっしゃわっしゃと撫で回され、それにまた胸をチクリと痛ませながらもどこか嬉しいなんて思ってる自分に吐き気がする。
と、そんな所で部屋の入口にノック音が響き、女将さんかと扉を開ければ、思いましていなかった人物がそこには立っていた。
『はー…い…っ?……太宰さんに谷崎さ……っえ!?なんで皆!!?』
「は…!?」
「いやあ、たまたまこのあたりで宿探しててさあ?それで、そういやどこかのちびっこマフィアがお気に召した旅館があったなぁって……嫌がらせ★」
「帰れ手前はあああ!!!!」
部屋お隣だからよろしくね、とあからさまに喧嘩を売る太宰さんに、面白いくらいに食ってかかるこの人。
そんなだから面白がられて余計に絡まれるんだよ、と口にはしないけれど毎度ながらに苦笑いをこぼした。
しかしそうか、皆同じところに泊まるだなんてそんな偶然…
思いかけて、すぐにその考えをやめた。
違う、偶然なんかじゃない。
こんなところまでわざわざ横浜から、この大所帯で探偵社員が来るはずない…そんなことは明白だったじゃあないか。
その人と目が合って、心臓がドキリと大きく鳴り、冷や汗が頬を伝った。
「…蝶ちゃん、一緒にアイスでも食べに行くかい?」
『!…い、いや…アイス……は中也さんと…食べに行く予定で…』
「じゃあ飴ちゃんなんてどうだろう、珍しいお店が入ってて〜…あ!そうそう、あとはジュースの専門店なんかも『分かりました、から…』……大丈夫?僕達今から大浴場に行くところなんだけど」
『…大丈夫です……乱歩さん』
他の皆が首を傾げたり、注意深く観察するように見たりしてくる中、私と名探偵の会話は終わる。
「うん、そっか!今回の大丈夫は心配いらなさそうだね…ああ、素敵帽子君。ちゃんと後でジェラート食べに連れてってあげてよ?うちの蝶ちゃんを…この子、世界で一番君の事が大好きなんだからさ」
『!!』
「はあ…?あ、ああ……って小っ恥ずかしいな…」
