第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
空が明るくなっていく。
「朝が、来たんだね」
彼岸花は呟いて、弟達に駆け寄る一期を見た。
「一兄!」
最初に叫んだのは薬研。
彼は、彼岸花の存在に直ぐ気付いたが、今度は攻撃してこなかった。
寧ろ、何処か苦笑する様な感じで、彼岸花を見ている。
「皆、私は謝らないといけないことがある。」
一期は落ち着いた声で言った。弟達は黙って聞いている。
一期一振は、誰にも弱音を言えなかった。
弟達を守らないといけない、そう思う一方で彼の心は追い詰められていた。誰かに、もっと早く心を砕けていたら、何かは変わっていたのかもしれない。
誰もが皆、辛いことを辛いと泣ける訳じゃない。
そういう意味なら、彼岸花が今回なんだかんだで聞けたことは良かったのかもしれない。
「………私は、皆を付き合わせてしまったんだね」
一期がそれでも闇落ちせずにいられたのは、弟達のお陰なのだろう。
「一兄………」
「すまなかった。私は、兄失格だ。」
弟達との間にあった彼の愛情は本物だった。
何処かで彼も、その愛情を否定したくなかったのだろう。
「………そんなこと言うなよ。一兄。俺っち達も、立派な弟じゃない」
「薬研……………いいや、そんなことはない!お前達が居たから、私は救われていたんだ!!」
「………なら、僕達もそうです。一兄」
「前田………」
「そうだぜ、一兄。一兄は最高の兄だ」
「厚………」
一期がまた、泣きながら弟達を抱き締める。
その先の会話は聞こえてこない。
ないしょ話の様に話す兄弟は、幸福そうだった。
彼岸花に、最善は解らない。
ここに居ることは、間違っている。そうは、言えるが、だけど彼処に苦しみがあることは間違いないのだ。
その苦しみを取り除くまで、多分きっと彼岸花は彼等を苦しめる要因を作った存在でしかない。
彼等とこの先、普通に話せるようになったとしてもだ。
(自分を甘やかしちゃ駄目なんだよな………)
日々精進である。
「ところで、どうやって帰るの?」
暫く時間を置いたところで彼岸花は尋ねた。
そろそろ帰らないとこんのすけ達も心配するだろう。
「それなら、そろそろこの世界も閉じると思いますので………」
一期が天を見ると、空が二重に見えた。
夜が明けた現在の空の上に、星空が見えている。
神秘的な光景に彼岸花は声をあげた。
