第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
暫くの静寂の後、俺の目の前に居る三人が同時に笑い出す。
「ふははっ……
こりゃあええのお。
《という存在》が土方をここ迄変えおったか。」
「僕達よりさんの方が強かったって事ですねぇ。
参ったなぁ。」
笑い続ける織田信長公と那須与一。
そして島津豊久は一歩、俺に歩み寄った。
「はああ……
日ノ本の武士(さぶらい)と刀を交わえんのは残念じゃが
貴様(きさん)の《決着》がそうだと言うんなら
それもまた、是非(しかた)無かだの。」
心底残念そうに息を吐きながらも、島津の表情は穏やかだ。
「いやー……
やっぱりは漂流者(ドリフ)だったんだにゃあ。
俺達が一番恐れていた敵を、
あっさりと排除してくれたんじゃもの。」
信長公の『一番恐れていた敵』という言葉に、俺は満更でも無い様子を隠しもせず踵を返した。
「じゃあな。
俺以外の輩に殺られんじゃねえぞ、侍共。」
気が緩んでつい多摩訛りが出て仕舞ったが、それすらも島津達には喜びの様だ。
「貴様の生き様、確と見せてくれりゃよ。
………と共にのう。」
信長公の柔らかい声色に一つ小さく頷き、俺は歩き出す。
そんな俺の背中に、島津は旧友に語り掛ける如く愉し気な口調で言い放った。
「次に相見える時には、
貴様(きさん)の《最愛》の顔も見せてくいや。
《島津》を頼むど。」