第45章 ・聖夜、光の中で

とある放課後、練習が終わった白鳥沢学園高校男子バレー部の部室でのことだ。

「若利君はクリスマスどーすんの。」

唐突に言うのは勿論天童である。

「特には。」

若利は相変わらず抑揚なく答える。

「え、なんも予定ないの。」
「そもそもあの行事自体が不思議だ。耶蘇(やそ)の信心なら祝ってもおかしくないがそうでない者もいるだろう。」
「またそんなかったいこと言っちゃってさ。じゃあ何、文緒ちゃんとデートもしない訳。」
「特に予定はない。」
「英太くーん、一発言ってやってー。」
「流石にんなとこまで踏み込めるか馬鹿ヤロっ。」

いきなり話を振られた瀬見は突っ込み、

「つまんねーのー。」
「どのみち天童さんには関係ないのでは。」

ブーブー言いながらみょんと上体をそらす天童に白布がもっともな事を言う。

「え、何で。若利君が文緒ちゃんとデートするじゃん、そんで休み明け俺らに報告入るでしょ、絶対一個は面白い内容が入ってるから聞きがいがあるじゃん。」
「屈折してませんかそれ。」

川西がぼそりと呟き、あのなと大平がため息をつく。

「天童のは完全におちょくりたいだけだろ。」
「そうなのか。」
「お前も気づけよ。」

きょとんとする若利に山形が平手突っ込みを入れた。


「というような事があった。」

夜遅く、帰宅して夕飯も済ませた若利は言った。膝の上に乗せた義妹の文緒はまあ何て事と呟く。

「天童さんはいつも困ったものですね。」
「実際のところお前はどうだ。」
「ご一緒出来れば勿論嬉しいです、その日は予定もありませんし。でも無理にとは申しません。」

義妹の返事に若利はほんの少し口を噤(つぐ)み、しかしすぐこう言った。

「そうか。」

愛してやまない義妹がそう言うのだ、考える価値はあると若利は思う。ふと見れば義妹が不思議そうに見上げていた。若利がその頭をそっと撫でてやると義妹は満足そうに目を細めてもたれてきた。