第11章 涙
私は自分の涙を必死に拭いていた
この顔を彼に見せる事が出来ず
彼に背を向け続けたのだった
横山「なんで
電気も付けてへんかったんや?」
私の姿に
彼は不審に思ったのだろ
優しく聞いてきたが
私は答える事が出来なかった
横山「おい、どないしたんや?」
心配そうな顔で
ゆっくりと私に歩み寄って来た
私は近寄って来た事を察して
作り笑顔だが微笑んで見せた
「いえ、何もありません・・・・
おかえりなさい・・・・」
私の強がりを
彼は直ぐに見抜いたようで
横山「そんな顔して
何にもないわけないやろ?」
そう言うと私の前に腰を下ろし
心配な顔を見せながら
ずっと私を見つめ続けたのだった
私の胸に彼の
心配している気持ちが流れてくる
でも何も言えずに
まだ溢れて来る涙を
拭きとっている私に
横山「まぁ、言いたくないなら
無理には聞かんけど・・・」
そう言いながら
ため息を私に聞かせたのだ
私は空気を変えようと思い
立ち上がりながら彼に言った
「何か飲みますか?
ビールでも持って来ますね」
立ち上がった私を見て
彼は暗い顔のままで
横山「おん、頼むわ・・・」
彼にしたら
帰って来て、理由も分からずに
泣かれていたら気になると思った
私は、必死で明るく声をだした
「本当にいつも
心配かけてすいません」
そう言いながら
冷蔵庫を開けてビールを取り出した
横山「別に、ええんやで・・・」
彼はテレビも付けずに
私を待つように座っていた
用意していたおつまみも取り出しながら
お盆にグラスなどを乗せて
彼の元に向かった
「実は、今日・・・・
前の家に行ったんです・・・」
私は彼の前にビールを置きながら
話す事にした
彼にこれ以上
心配を掛けたくなかったから