第52章 初恋苦し（北信介）完結

『…ごめん。
チョットお手洗い行ってくるわ
すぐ戻る…！』

「…！？」

前を向いたはずの顔が
布施の声で
その姿を追う

「おい、侑…！」

同じく布施の背中を
見送ってた侑を見ると

「…練習中ですよ」

「せやかて…アイツ…」

様子おかしかったやろ
もしかしたら泣いてるかも…

「奪う気ないんやったら
構わん方がエエ…デス」

奪う気って…
もう無理やろが。
布施とお前は、もう…。
俺の入る隙間なんか
もうないやろ…
でも…

「べ…」
「便所は我慢したらアカンですよ」

「治？」

「気持ちの整理してから
戻ってこい、信介
怪我すんで」

コートから追い出され

「…俺の事は
気にせんでエエですから」

侑に背中を押される

気にせんでエエって
言うても…
どうしたらエエんや？
肝心の布施の気持ちとか…

悶々としながらも
早足で廊下を歩いてると
蹲る背中が目に映る