第52章 初恋苦し（北信介）完結

隣にあるのに
近くならない温もり
当たり前や
この温もりは侑のモンで
たまたま俺の
隣にあるってだけなんやから

「ほなな
また明日もおいで
待っとるよ」

『行ってエエんですか？』

「なんやそれ、今まで
なんやってん
良い言わんでも来てたやろ」

軽く笑い
布施の側から
逃げる様に家まで走って帰った

「信ちゃん？帰ったんか？」

「婆ちゃん…俺…な」

辛いねん
苦しいねん

でも…

「…やっぱ何もない
頭冷やして来るわ」

逃げてたらアカンよな

走って切れた息が悔しくて
逃げた自分が情けなくて
お風呂で水を頭に
思い切りぶっかける

シッカリせぇや、信介。
難しい事やないやろ

気持ちを伝えるだけや
玉砕するかも知らんけど
もしかしたら
あるかもやろ？

奇跡っちゅうやつが。

布施の今日の態度
追いかけてくれた温もりを
思い出し
明日の朝こそは、と
気持ちを固める