第52章 初恋苦し（北信介）完結

まだ侑と別れた事すら言うてへんのに
こんなんしたら
盛り付いた雌犬と思われても
仕方ないやつ！

『いや、違うんです！
軽い気持ちとかやなくて！』

ナンパ男のよく言う言い訳みたいな
セリフに
北さんは益々困った顔して黙り込む

「…冗談って言えや
いや、冗談でも
そんなん言うたらアカン。
布施、今日はもう帰り
お前も俺も今日はどうかしとるんや」

困った顔のまんま
私の背中を叩く北さん

冗談なんかやないよ
私は…北さんが…
好きなんです

でも…それは

「…俺は侑の事も
可愛い後輩やから
お前とは二人きりに
なるわけにイカンねん。
特に今家には誰も居らんからな
また…学校でやったら
聞いたるから
今日は帰り、な？
送る…から」

言ったらアカン
気付いてもアカン事やったんかな…

『…二人きりが駄目やったら
送るのもアカンのちゃいます？
別に暗くもないし
一人で帰れますから……！』

張り上げた声に
食い下がる事もせず

「さよか。
ほな、気ぃつけてな」

背中を向ける北さん