第52章 初恋苦し（北信介）完結

分かるよ、分かるに決まってる
この声にどんだけ励まされたか
分からへんもん

「おめでとうさん」

一番祝福して欲しかった
この人の声で

せやのに、なんでやろ

「邪魔してスマンな
治、俺…帰るわ」

胸が痛くて苦しいねん

『…ま、待って！
あ、あの！
私も帰る所ですから！』

なんでこんなウソ
付いたんやろ、私。

「…気遣わんでエエわ
これからっちゅう所やろが」

振り返った先の
優しい笑顔に

『ほ、ほんまです！
用事思い出して！
せやから…せやから……！』

なんで涙が溢れそうに
なってるんやろ

「…そうなんか？侑」

北さんが私の隣を見上げて
声を放って
ハッとする。

私、今なに言うた？
侑に誘われて
部屋で…って時に…

「そうなんちゃいます？
本人がそうやって言うてんやから」

うわ、コレ絶対怒ってるやんな？

「…さよか。
ほな、行こか？布施」

『あの、侑…』

なんて言うたら
エエんやろ？

てゆっか、この気持ち、何？