第17章 介護ってなあに?
「ところで山田さん。先ほど松本が言ったとおり、俺達は介護に必要な資格を持っていません。そんな俺達に、出来ることってあるんでしょうか?」
こういった施設では資格を持たない俺達みたいな人間が、”利用者”と呼ばれる人達の介護に直接携わることは出来ない、と聞いたことがある。
そんな俺達がなんの役に立つんだろう?
山「出来ることがない、とお思いですか?」
俺を含め、そこにいた全員が大きく頷く。
山「そうですね…。確かに仰るとおり、資格を保持していなければ、直接利用者さんの介護に携わることは出来ません。でも、果たしてお世話…つまり入浴とか下のお世話をするだけが介護でしょうか?
私は違うと思います。介護をする私達職員のサポートをすることだって、立派な介護だと思うんです。それに”見守る”ことだって介護をする上で重要なことなんです」
”見守る”か…
それならば、資格を持たない俺達にも出来るかもしれない。
山「危険はないか、不安はないか…常に見守ってあげることだって、介護の一つなんです」
O「オイラ良く分かんないけど、ここにいる爺ちゃんや婆ちゃん達が安心して暮らせるように、ってこと?」
山「そうです。安心して暮らせるように…そして安らかな最期を迎えられるように…。
さ、お話だけじゃ伝わらないこともあると思うので、施設設備の案内がてら、実際に介護の現場を見てみましょうか?」
いよいよ、か…
山「あ、ひとついいですか? 時には難しいこともあると思いますが、利用者さんとは出来る限り”笑顔”で接することをお願いしますね?」
山田さんが席を立つと同時に俺達も腰を上げ、山田さんの後についた。