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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「…リーバー班長」

「ん?なんだ?」

「花火、始まってますよ。一緒に見ませんか?」

「ああ、俺はいいから楽しんで来い」

「でも…折角の休日ですし、」

「これを一段落させたいんだよ。終わったら行くから」



身を屈めて、恐る恐る声を掛ける南。
仕事時のリーバーは、時として鬼のように厳しい一面も持っている。
それを知っているからこそ、強くは出られないのだろう。
そんな南に、顔も上げずに淡々と返すリーバーの目は計算式を追い続けている。



(はんちょの奴、南だって気付いてないな)



余程集中しているのだろう。
ラビもまたブックマンの仕事で大量文献を暗記する時に世界に入り込む節があるから、それはまだ理解できる。
ひらひらと羽ペンを握った手を振られてしまい、何も返せずにいる南が困った顔でラビを見上げてくる。



(…しゃーねーな)



二度目の溜息をつきながら、ラビもまた入口の前で屈み込んだ。
ガリガリと書類の上で忙しなくペンを走らせているリーバーに、口元に手を当てて呼び掛ける。



「はんちょー。海で仕事なんてやってんのはんちょだけさー」

「んー」

「皆の所行こーぜー」

「んー」

「んーじゃわかんねぇって」

「んー」

「…はんちょのええかっこしー」

「んー」

「………」

「んー」

「南が全裸で泳いでんだけど」

「っっ!?!!!!」



ガダンッ!



圧力オーバーしたのか、羽ペンの先が書類の上でボキンと折れる。
と同時に思い切り掛け外した肘が、ランプに当たって転倒。



「うわっ!」



慌ててランプを掴み、火が燃え広がっていないことに安堵。
も束の間、血相を変えてリーバーはテントの入口へと駆けた。



「南がなんだっ……て…?」



しかしとんでもない光景が海にあるのかと思っていたら、渦中の人は目の前。
しっかりと水着を着込んで、裸体など晒していない。
ぽかんと見下ろすリーバーの目に映るは、赤い顔でふるふると震えている南。



「南がンなことするって信じたんか…はんちょのスケベ」

「な…!」



ぷすりと笑うラビ。
ランプの火が燃え移るかの如く、ボッとリーバーの顔が忽ち赤く染まった。

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