第58章 ストック
Jun side
翔くんの言葉で次々と映像と音が蘇ってくる
10年くらい前…
ZEROのディレクター…
セクハラ…
楽屋で躰を触られて…
翔くんが助けてくれた…
だからもう終わったと思ってたのに
躰が地面に落ちた直後
視界に映ったのは
もう会いたくないと思った人だった
動けなくて
抱き上げられて車に運ばれた
薄れていく意識の中
何度も聞こえた「松本くん…」と俺を呼ぶ声
素肌の上を這う手のひら…
怖かったのに…躰が動かなくて
抵抗一つできなかった
潤「っ…ぁ……ぅ…っ」
潤が狙われたんだ…と翔くんが言った途端に
目の前が霞むほどに頭が痛んで
座ってることもできずに足が崩れた
翔「潤…っ」
ラグの上に転がった俺に手が伸ばされる
潤「やっ…ゃだ…っ」
その手が…翔くんの手が…
太くて汚い手に変わる…
潤「ゃめて…っ…っ」
俺が狙われたって……なんで…?
疑問はまだあるのに
そんなの考えられないほどに恐怖がこみ上げる
家の中だったはずなのに
車内で見た映像と重なる…
潤「怖ぃ…っ…助けてっ……」
呼吸があがって
うまく酸素が取り込めなくて…
潤「ぁ…はぁっ…はぁっ…苦し…っ…はっ…息…できな,よ…っ……は…ぁ…っ…助け…っ」
思わず首元を掴もうとした手を
ぐっと掴まれて引っ張られて
翔「潤…大丈夫だから…」
その声とともに躰が包まれた
でも
潤「やっ…はぁっ…やめ…っ…は…っ…」
それが誰なのか
混乱した頭は認識できなくて
だけど躰にうまく力がはいらなくて
その温もりに身を預けた