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FIVE COLOR STORM

第3章 ドルフィン*Dolphin*


〈智〉

この日もいつも通り潤は松葉杖をついて
今日発売したばっかりの漫画雑誌片手に屋上に向かっていた

キレイに晴れた今日はきっと気持ちいいだろうと
テンション高く扉を開けると

潤「あ…」

いつも座っていたベンチには先客がいた

ゆっくり近づくと

その彼は左手を布で首に吊って
右手で何やらスケッチブックに絵を描いている

潤「あの…隣いいですか?」

後ろから声をかけると
余程集中していたのかちょっと肩を跳ねさせて

智「うん,いいよ」

ふにゃっと優しい笑顔を見せた

その顔に潤の心はふわっと温かくなる

隣に座って潤は漫画雑誌を開いて
智は絵の続きを描く

会話はないけど
気まづい沈黙でもなくて

心地よい空間が二人を包んでいた

智「あっ…」

不意に風が吹いて
智のスケッチブックがパラパラと捲れる

智が片手で慌てて抑えるそれを見て

潤「大丈夫ですか?」

潤が手を差しのべると

智「ふふ…ありがとう」

またさっきの柔らかい笑顔を見せてくれた

それに潤も笑いかけると
その天使のような笑顔に智の視線が奪われた

少し見つめあって…
互いにちょっと頬を染めてまた自分のしていたことに戻る

そのうち空気が冷えてきて

潤は智の画材を片付けるのを手伝って
智は潤が階段を降りるのを手伝って
院内に戻った

潤「あれ?そこなんですか?」

智「隣だったんだね」

別れ際偶然にも病室が隣なのを知って
二人は顔を見合わせて笑ってから
それぞれの病室に入っていった
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