第19章 月頼み@岩泉一
「…美心」
岩泉は美心の肩を抱き寄せ、またキスをした。…今度は唇に。
「もう、ここ外」
キスは…まぁ慣れたが、人に見られるのはやはり避けたい。屋台の裏であり影になっているとはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。
「誰も見てねぇよ。さっき確認した」
そう言って、今度は耳に口付ける。嬉しい反面、美心は違和感も感じた。
普段、岩泉もキスを外でしたがらない。同じ理由で、手を繋ぐのも渋る。
…そういう面から言えば、今日はレアだ。
「断言は出来ないでしょっ!」
美心は、嬉しさ半分怒り半分、岩泉に抱き付いた。彼の甚平にぬくもりを覚え、顔を埋める。
「…わり、なんかイラっとしたから」
「八つ当たり?岩ちゃんのバーカ」
「及川の真似すんな」
岩泉は彼女の頭を撫で、また額にキスを落とした。
今日は甘えたさんだなぁ。
「もう、はじめちゃん…」
「ねっ、今キスした⁉︎したよね⁉︎」
「バカ、お前声でけーよ」
「リア充爆発しろ…オーバー」
「ほんと静かにして!!」
先程の4人が、物陰から覗いていた。