第2章 持続性スリープ
彼に振り回されるのはいつものことだ……中一の頃から何一つ変わらない
その頃とは大きくなった背中を後ろから眺め、ふとそう思う
彼になにかあったのかは知らないけれど、あの駅のホームでの笑顔は……言葉は…………
『嬉しいんだ……案外ちゃんとした先生で』
『前の先生は……勝手に死んじゃったから』
普段の彼よりも、嫌いだ
そんな嫌いな相手に手を貸してしまう辺り、私はどうしようもないくらいお人好しで……痴話喧嘩のように思われてしまうんだ
「……ひとつ、思ったんだけどさ」
「はい?」
商品などから視線を外さず、私なんて一切見ずにいきなり問いかけられる
「俺さ、雪乃のこと嫌いじゃん?」
「何を今さら改まって……」
「それから、雪乃も俺のことが嫌いでしょ?」
「当然」
「それってさ、同族嫌悪なんだと思うんだよね」
「!」
同族嫌悪……か。そんなの考えたこともなかった
そもそも、私がなぜ彼に嫌われているのかも知らないし、知っていればそんな考えも浮かんだのかもしれない
「でも、同族にしては趣味もなにもかも違う気がする」
「じゃあなんであんたは俺に付き合ったの?」
「え?だって……」
言われたし、しかも助けてもらったと思いたくないけど助けてもらったような感じだったし……
いくら嫌いだと言っても私にだって感謝の情くらいある
それに……
「…………貴方が考えそうなことは、なんとなくわかってるし……」
自分でも驚くほど、すんなりと彼の行動がわかる
根本的なのは無理だけど、あらかた。サブタイトルじゃなくてメインタイトル程度のこと
そう答えると、やっと彼は商品を選んでこちらを振り返った
「それだよ、感性が似てて、尚且つ嫌いな相手だからこそ互いに互いを知っている…………知ろうとするその態度、その同族嫌悪だよ」