第36章 君がくれる口づけは《カラ松END》
淡々と答えるカラ松くんに、わたしは、目を見開き凍り付いた。
「そんな……なんでっ? なんで、なんで、なんで!? どうしてこんなことしたの……!?」
カラ松「言ったじゃないか。物語はハッピーエンドじゃなくちゃ、って」
「どういうこと? これが……カラ松くんの思い描いたハッピーエンドなの!?」
意味がわからない……
これのどこがハッピーエンドなの? これでカラ松くんはハッピーなの? 幸せなの? こんな……惨劇のどこが幸せなの?
カラ松「さくら……さくらは言ったよな? 本当は、このまま俺と幸せになりたかった、って」
「言ったよ……? それとこれと、なんの関係があるの?」
カラ松「ブラザーたちがいなくなれば、さくらはまた俺を見てくれる。また、ふたりで愛し合える。俺たちは、幸せになれるんだよ」
「意味わかんないよ…! みんなを殺せば、わたしがまたカラ松くんを好きになるって……本気でそう思ってるの!?」
わたしは、カラ松くんの手を振り払い、立ち上がった。
恐怖よりも、彼から逃げなくてはいけないという気持ちのほうが強くなっていた。
わたしは、カラ松くんを突き飛ばし、その衝撃でふらついた彼の横をすりぬけて玄関に向かった。
……逃げて、誰かに助けを求めなくちゃ。
そして、救急車を呼んで……警察に連絡して……それから……
ぐいっ
その瞬間、腕を後ろから引っ張られて、わたしは仰向けに倒れた。
背中に強い痛みを感じ、思わずうめき声がもれた。
そして。
ザクッ!!!
わたしの顔の横の床に、何かが刺さった。
見ると、それは血まみれのナタで……わたしの上にカラ松くんがまたがっていた。
カラ松「……どこ行くんだァ?さくら?」
カラ松くんは、狂気に満ちた目で笑っていた。
「っ……」
声が出ない。
目の前には、わたしにまたがるカラ松くん……そしてその手にはナタ……
逃げなくちゃ、という気持ちを、ふたたび恐怖が追い越した。
カラ松「もう邪魔な奴らはいなくなったんだ。これからは、2人で幸せになろう、さくら?」
「いやっ……いやぁ…」
ぐいっと顔を近づけてくるカラ松くんに、思わず涙がこぼれる。
「お願い、離して…っ、こんなこともうやめて…カラ松くんっ!」