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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


気付いた湖は、「なんですか?」と四つん這いで這っている
立つのも億劫なくらい腹がきついのだろうが、礼儀はなっていない
ただそんな事を気にもとめない謙信は、湖が来るのが遅いと自分が立ち上がって湖の脇に手を差し込んだ

「ひぁっ」

そして、ひょいと持ち上げると…

「やはり重さが変わらない」

そう眉間に皺を寄せ言うのだ

「まさか、謙信。変わらないわけはないだろう?いくらなんでも、九つと十二じゃ…」

そう言う信玄を立たせ湖をそのまま手渡せば

「…確かに…たいして変わりがないかも知れないな…」

と、信玄の表情も険しくなるのだ

「…謙信さま、信玄さま…私、お荷物みたいになってますよー」

脇に手を差し込まれ、抱えられるわけでもなく宙ぶらりんで二人の間を手渡されて湖は少しだけ不満な顔をした

「本格的にまずいぞ…湖、いい女は少し肉付きが良くないといけないからな」

顔色の悪い信玄は、胸病気が痛むときよりその色が悪いのだ

「え…っ?」

それに気付いた湖が周りをみれば、みんな深刻そうな表情をしているのだ
側に控えている女中までも

「あれ…?私、そんなに薄いの?」
「薄いというか…病弱にみえまする。実感してしまうと、そんな身体の湖様を馬で遠出させるなど…許可できませんな…」

うんうんと、信玄と幸村、それに白粉と女中達に頷かれ

「え…、だって。乗れるよ。信玄様と一緒に馬でお散歩したもの」
「いや、細いとは解っていたが此処までだと理解していたら馬になど乗せてなかった」
「…え、待って。兼続、私…馬に乗る前に体重増やさなきゃいけないの?!」
「さようでございまするね。軽すぎては振り落とされまする」
「っ、じゃあ!食べるっ!!遠出したいから、食べる!太るからっ!!…でも、今はむりーっ、もう入らないっ、もうくるしーの」

誰となく笑い声が聞こえた夕食の席であった
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