第16章 発覚
夕方になり、玄関のチャイムが鳴った。
「はーい。どちら様ですか?」
私より先に母が玄関に向かった。
「シュリ、俺。」
徹の声だった。
徹は、母の声を私の声と勘違いしているようだ。
母もそれを察したのか、悪戯な笑みを浮かべた。
「お帰りなさい、徹君。」
母が玄関のドアを開けた瞬間、徹の表情が固まった。
私は母の後ろから顔を出した。
「今返事したの、お母さんだよ。」
徹は引きつった笑みを浮かべた。
「間違えました、すみません…。」
母と私は大爆笑した。
母はたまに、こういう悪戯をするお茶目な一面がある。
「羽山です…。」
徹は母に軽く頭を下げた。
「シュリの母です。さぁ、入って。」
徹は部屋に入り、母にスーパーの袋を渡した。
「ありがとう。いくらだった?」
「いや、いいっすよ。ご馳走になるんで。」
「ダメよ。その辺りはちゃんとしないと。」
徹は母にレシートを渡し、母はきっちりお金を払った。
母は早速料理に取りかかり、徹は私の隣に座った。
「お前、ビビらせんなよ。」
「お母さんのちょっとした悪戯だよ。」
「あっそ。で、検査どうだった?」
「思ってたより痛くなかったよ。」
「結果は?いつ出んの?」
「出たら電話が来るみたい。」
「そうか、わかった。」
徹はそう言うと、料理をする母を見つめた。