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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第31章 完璧な世界


――雨が上がった空には虹が掛かっていた。





「俺がいなければ、なんてアンタは云うけど。いるんだから仕方ないじゃん。」





「――3ヶ月ですね。」

その言葉に、女は嬉しそうに笑った。

「そうですか。」
「出産を希望されますか?」
「勿論です。主人も喜んでくれると思います。」

そう言ってそっと自分の腹を撫でた彼女の顔は酷く穏やかで医師も自然と笑みが零れる。

「こんな山奥で初産は不安かも知れませんが、出来る限りサポートはしますので。」
「はい。有難うございます。」
「じゃ、ここにサインをお願いします。――狡噛泉さん。」

名前を呼ばれて、泉は嬉しそうに笑った。

「お待たせ、慎也!」

外で煙草を吸いながら待っていた慎也は泉の元へと駆け寄る。

「どうだった?!」
「はい、今日から禁煙ね。ついでに一生やめてもらいます!」

泉はそう言えば、慎也から煙草を取り上げた。

「――それじゃ。」
「3ヶ月だって。しかも3ヶ月にしてはお腹大きいからもしかしたら双子かもって言われちゃった。」

その言葉に、慎也は泉を抱き上げる。

「きゃああ!慎也!危ない!」
「やったな。一気に両方産んでしまえ。」
「――簡単に言わないでよ。」

落ちないように慎也の首に抱き付けば、泉は苦笑した。

「――雑賀先生に報告に行こう。きっと喜んでくれる。」
「そうね。――あと、お墓参りも。両親と――、お兄ちゃんに報告しなきゃ。」
「――あぁ。そうだな。」

そう言えば、慎也は泉にキスをしてゆっくりと降ろしてやる。
そっと泉のお腹を撫でれば、慎也は嬉しそうに言う。

「名前、考えなきゃな。」
「うん。そこはお父さんにお任せします。最初の仕事よ、頑張ってね?」
「――分かった。」

手を繋いで歩き出した二人を、風が優しく背中を押した。

2013/03/23 了
2015/12/23 再掲
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