第6章 ☆徳川家康☆ ~俺の誕生日~
『ごめん…』
そう言って、綾を抱き寄せる。
『馴れてないんだ…人にお祝いされるの』
ハッとしたように俺を見つめる綾。
人質時代は、まるで物のように扱われていた。
俺の命など、今川の出方次第で明日にはあるのか分からない状況でずっと生きてきたから。
自身の命は、国のため。
お祝いされる為にあるのではなかった。
『私は…こうやって家康が今日の日に産まれてきてくれたから家康と出逢えた。
だから…家康が産まれてきてくれた事が本当に嬉しいよ』
『うん。』
やっと、素直に返事ができた。
『ありがとう』
そう言うと、綾は嬉しそうに微笑み俺を見つめる。
どちらかでもなく自然に唇を重ねた。