第23章 >>21 件って付けりゃ良い訳じゃ無いよ(赤葦side)
そうか、なら良かった。
そう胸を撫で下ろし再びあの惨劇を思い出す。
胸に引っかかるのは、やはり《絵筆》と名乗るネットの住民達。
1番の可能性は、この街に新たなカラーギャングが生まれた事。
今までと違うのは、個人が見えない完璧なる匿名制だと言うこと。
何処から狙われるか、はたまた自分のチームにすら潜んでいるかもしれない恐怖が喉に突っかかる。
「木兎さん...もしかしたらこの街は...。」
言いかけた言葉は、嬉しそうな木兎さんの笑顔によって止まる。
「大丈夫だ、あかぁし。」
ああ、駄目だこれは。
木兎さんの顔は、とてもとても嬉しそうに興奮した様だった。
「そろそろ隠れんのも飽きた。全部全部白く染めてやろう。」
こうなった木兎さんは、僕にも止められないのだ。
木兎さんがそう言うのなら、木兎さんが歩む道ならば。
たとえそこがどんなに血生臭い、嗚咽の響く道だろうが共に進もう。
「はい。木兎さん、喉を食いちぎってやりましょう。」
それに答える様に僕も笑う。
誰かの足を掴んで転がせて、そこで食べる。
そろそろ僕らも立ち上がり、相手の土俵に上がり込んでも良い頃合だろうか。
「烏達もそろそろ食い散らかしにかかんじゃねぇーかな。」
酷く嬉しそうな表情に鳥肌が立つ。
病室の窓から眺める空には、群れをなしたカラスが警笛を鳴らす様に、狼煙を上げる様に鳴いた。
「俺らは俺らのやり方で色を塗らせてもらうぜ。」
そんなカラスに向かって木兎さんはそう告げると、傍に置いていた上着を羽織り、紙袋を差し出して僕を見る。
「赤葦。」
「はい。もう行けます。」
短く会話を交わし紙袋を受け取る。
中に入っていた着替えを取り出し、素早く着替える。
病室を出る頃には、もうすっかり指の違和感は消えていた。
慣れって、怖いね。
日が沈む────
色を持った者達の時間が始まる────