第5章 >>4 3回回ってワンな件
『あ……。』
今日引き下ろした、報酬が入っているそれは不自然に盛り上がり、所々からお札がはみ出していた。
「えっ…と…ちゃ…ん? 」
先程迄とはうって変わって、優しい及川の声にぞくりと震える。
「なんでそんな大金持ってるの…?家が金持ち…とか?」
ジャージを履いたのを確認したのか、近付いてきて落ちた財布を拾いそう聞かれた。
ネットで色んなサイトハッキングしたり、ネットゲームで不正したり、政治家の票改ざんしたりして稼ぎましたなんて絶対に言えない訳で。
「どっかのお嬢様だったのかお前…。」
岩泉は未だ混乱しているのか、頭を抱えてそう言った。
僕はというと、《次》の言葉が出ずにただただその場に立ち尽くしていた。
『これは…。』
時すでに遅し。
本日3回目。
彼等は少し警戒したようで、それでいて興味を示した様にこちらをじっと見据えた。
これは簡単には帰して貰えないんだろうな、と酷く冷静に、いつも通り、他人ごとの様に思った。