第23章 ~恋ネコ③~ あと出しプロポーズ
翌日の夜、私は父と一緒に
ゆーき君のご実家にお邪魔しました。
ご両親と、
昨年結婚したばかりのお姉さん、ゆーき君。
そして、犬のアキオ。
私にとってはすっかり
東京の家族のような存在です。
『突然で申し訳ありません』と頭を下げる父を
ゆーき君のご家族は和やかに迎え入れて下さり
夕食をいただきました。
近いうちに、
みんなで家族旅行がてら私の実家に来て
結納をしましょう、という話になった時、
ゆーき君のお姉さんが、ふと口を開き
『ねぇ優生、急に結婚って話になったけど、
アキちゃんにちゃんとプロポーズしたの?』
と言ったのです。
『…あ、してないね。
まずは同棲ってつもりだったから。』
『ちゃんとしないと。
あんた、友達のプロポーズ、
手伝ってる場合じゃないじゃん!』
『そうだね、でも、なんか、
先におとうさんにまで会ってるのに
それからプロポーズってのも
今更感、MAXじゃないかな?』
『そういう問題じゃなくて
ちゃんと言葉にすることが大事じゃない?』
『いえ、あの、ほら、
一緒に住もうよって言ってくれたのが
私にとってはもう、プロポーズみたいな
もんだから、それでもう充分…』
…と私が言うそばで
『いや、ダメだろう、
お見合い結婚のお父さんだって
お母さんにプロポーズしたぞ。
ましてやお前ら、長いつきあいなんだから
ちゃんとケジメつけないと。
こうしてお父様も来て下さったんだし。』
…と、ゆーき君のお父さん。
『いやいや、私こそ突然来て、
急に結婚するように優生君に言ったんですから
却って申し訳ないです。そこはほら、
また優生君なりに考えてそのうち…』
…と言ったのは、うちの父。
『あら、じゃあ、』
と言って別の部屋に姿を消して
すぐに戻ってきたのは
ゆーき君のお母様。
『これで今、プロポーズしなさいよ。』
…と、
エンジ色の小さな箱から取り出した、
縦爪のダイヤモンドリング。
『お父さんからもらった婚約指輪。
でももうデザインも古くさいし、
何より私もほら、太って入らなくて。
今じゃタンスの肥やしだから。』
『お前、やった俺の前で
古くさいとかタンスの肥やしとか言うか?!
それに、そんな理由で
アキちゃんにあげたら失礼だろ?』
プーッとふくれるゆーき君のお父さん、
ホントにかわいいご夫婦(笑)
