第7章 ・若利は怒力する
「それはこれから見極める。まずお前は俺の話相手をしろ。」
「難しい事はわかりません。バレーボールの事は五色君がボツボツ教えてくれますが。」
「わからないなら学べばいい。物がわからない奴だとは思わない。」
白鳥沢に編入出来るくらいだ、勉学レベルに問題があるとは到底思えない。それに
「お前の話をもう少し聞きたい。」
若利はふと呟いた。何故そう言えたのかは後になってもわからない。
「お前が何を見て何を考えているのか、何を知っていて何を知らないのか。」
「私をお知りになりたいということですか。」
「そうだ。」
「わかりました、兄様。」
文緒は初めて若利の前で笑った。
そして次の日である。
「何か今日は牛島さんの妹の機嫌良かったです。」
部活前の着替え中に五色が報告してきた。
「文緒ちゃんはクラスじゃいつも機嫌悪い訳。」
「いえ天童さん。ただあいついつもはあんまり顔変わんないんです。」
「あらら、流石ほぼ他人でも親戚。」
天童は言って若利をチラと見るが若利は首を傾げている。
「でも今日は朝からちょっと嬉しそうな感じでした。」
「へー。という事は若利君何かしたの。」
「関係があるかわからないが俺は大平の忠告に従ったまでだ。」
「その話詳しく。」
天童に促され、若利はチームの連中に昨晩の報告をした。
「若利、頑張ったんだな。」
「大平さん、涙拭かないでください。まるっきり保護者ですよ。」
「賢二郎、それは勘弁してくれ。」
「つか何でそんないちいち回りくどいんだよ、お前らは。不器用か。」
「どう見ても不器用だよ英太君。」
「2人ともやめなさいよ。」
慌てつつも大平はすぐに落ち着いて若利に向き直る。