第34章 ・牛島兄妹、留守番をする その2
という訳で母も祖母もいない家でしばし過ごす事になった牛島兄妹だがそれは学校にいる間にも多少影響があった。
「おはよう、五色君。」
朝練を終えて教室に入ってきた五色に文緒は挨拶する。
「よ、よう、文緒。」
五色も挨拶を返したがやたら目線がキョロキョロしている。何なんだろうと思いつつも文緒は口を開いた。
「さっきはごめん、お邪魔して。先に兄様に渡しておかないと私すぐ忘れるから。」
「べ、別に、邪魔ことねーよ。面白かったけど。」
「面白かったって。」
「何でもねぇっ。」
「変なの。」
「お前に言われたくないっ。」
「失礼な。」
「お前大概変だろっ。」
「変わってるって言われるのは慣れてるけど五色君に言われると何となく腹立つ。」
「何をぅっ、俺は普通だ。」
「うーん。」
「そこは考えるなっ。」
「無理言わないで。」
1-4の連中がまた始まったとクスクス笑い合う。義兄の若利ですら知らない事だが文緒が編入し五色が元々は若利の事を聞こうと思って話しかけ始めてから2人はだんだんこういうやり取りをするようになっていた。
「てかお前何かいつもより眠そうだぞ。」
「早起きして兄様の分のお弁当も作ってたから。お母様達が帰るまで当分こんな感じだと思う。」
「何かよくわかんねーけど大変そうだな。」
「頑張る。洗濯物もちゃんとしないと兄様が困っちゃうし。」
「お前竿に手ぇ届くのか。」
「そんな事言うんなら五色君によってもらって手伝わせるから。」
「断るっ。つか出来るもんならやってみろっ。」
「兄様に先話通しとく。」
「やめろ馬鹿メール打ち始めんなっ。」
「冗談だよ。」
くっそまたやられたとブツブツ言う五色、文緒はガラケーをスカートのポケットにしまいながらクスクス笑う。
「何かお前、ちょっと変わった。」
「変なのがひどくなったって意味。」
「そうじゃねーよっ。その、前よりもっと、」
五色はここで珍しくモゴモゴと言った。
「話しやすくなった。」
思いもよらない評価に文緒はキョトンとする。
「そうなの。」
つい聞き返す文緒に五色はうんと頷いた。