第33章 ・牛島兄妹、留守番をする その1
幸い大平が早めに復帰して野郎共を引っ張っていったので朝練には間に合った。しかし何となく様子のおかしい奴らにコーチの斉藤が不思議がる。
「最近何かレギュラー勢の雰囲気が今までと違うような。朝から明るい感じがしますね、元気なのはいいことですけど。」
呟く斉藤に監督の鷲匠はうーんと唸る。
「どうも若利んとこに来たあの妹が絡んでる気がしてならねぇな。」
「文緒さん、でしたか、仲がいいとは聞きますが。」
「行き過ぎてなきゃいいけどな。」
年長者の勘を侮ってはいけない。
そうして朝練が終わってからの事である。
「あー、朝から笑い死ぬかと思った。」
「太一は笑い過ぎだろ。」
「賢二郎だって壁からズルズル落ちてたじゃん。」
「うるさい。」
「というかあいつら何だ、夫婦か。」
ったくよ、といった調子で言うのは瀬見、そこへ天童がそう、それっと乗っかる。
「俺も思ったっ。まるっきり新婚さんっ。」
「はは、確かに文緒さんのノリがそんな感じだったな。意識はしてないだろうけど。」
「うーん、もしかして若利んとこのかーちゃんは嫁にすることも踏まえて引き取ったんだったりして。」
「隼人君もそー思う。俺ももしかしてって思うんだよねー。」
「えっ、まさかっ、そんなっ。」
「工、落ち着け。天童らの戯れ言真に受けんなよ。」
「だってあいつ牛島さんのこと大好きだし。」
「お前あの妹と席隣りなんだよな、いちいちそういう風に意識してて今後どうすんだよ。」
「白布さん、俺は別にっ。」
またも顔を赤くする五色、そろそろだなと思ったのか大平がお前らと声をかける。
「その辺にしよう、若利が戻ってきて聞こえたら申し訳ないから。」
「寧ろ面と向かって言った方がいいじゃないんでしょうか。」
「一緒に笑っちゃった俺が言うのもアレだけど太一やめなさいね、最近どうしたホントに。」
「文緒さんが来てからこっち、毎日が楽しいもので。」
「困ったもんだな。」
ため息をつく大平に天童が諦めなって獅音と言った。
「若利君が文緒ちゃん絡みでネタ投下するんだからしょうがないよ、それも天然で。」
「嫁、うーん。」
「工はそこ深く考えなくていいから。」
次章へ続く