My important place【D.Gray-man】
第38章 幾哀心
「ありがとう、雪」
「ううん…私の方こそ。ユウのこと、そんなふうに思っていてくれて…ありがとう、マリ」
私は心音を読める能力なんて持ってないけど…マリの気持ちね、わかるよ。
だって私も嬉しかったから。
ユウの過去を少しだけ知って、ユウの隣に立っていたいと思うようになってから。
誰かがユウのことをちゃんと見ていてくれることが、嬉しくて仕方なかった。
きっとそれは、マリと似た気持ちなんだと思う。
「…神田にも礼を言わないとな」
「え?」
くす、とマリの口元に笑みが零れる。
「温かい音色だ。聴いていて、凄く心地良い」
「え、と…」
それって…私の心音ってこと?
聴き入るように目を瞑り穏やかに笑うマリに、少し気恥ずかしくなる。
それも心音で伝わったのか、くすりとまたマリは口元を緩ませて笑った。
「それはきっと神田が雪に与えたものなんだろうな」
それは…否定は、しないけどさ…。
「…やっぱりちょっと…プライバシー侵害…」
「ははっ悪い悪い」
マリには隠し事とかできないんじゃないかな…もしかして。
「…まぁ、いいけどね」
あまりにマリが穏やかに笑うから、私もついつられて笑みが浮かぶ。
…こんな人柄だから、きっとユウもマリには喧嘩売ったりしないんだろうなぁ…。
マリと一緒にいると、なんだか自分まで優しい人になれる気がする。