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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



「君の願いを聞いてあげる代わりに、君にも僕の願いを聞いてもらおう」

「は?貴方、何言って…」

「それならフェアだろう?」

「何をふざけたことを…!」



驚きを見せたのはトクサだった。
明らかに掌の上で命を転がされている状態のどこが、フェアと言うのか。

しかしシェリルにはトクサの声など届いていない。



「どうだい?ラースラ。君が望むなら、彼にはこれ以上手を出さないよ」



ただし、と雪に伸ばされる手。



「君が僕らの家族になるならね」



この手を掴めと言わんばかりの誘いに、トクサはギリと奥歯を噛み締めた。



「いけません月城!こんなノアの…ッ敵の言うことなど耳を貸すな!」

「敵とは酷いねぇ。僕はラースラと同じだよ。君達エクソシストが、彼女とは違う生き物なんじゃないか」

「黙れ!月城を利用する気でしかない癖に…!」

「それは君達だろう。覚醒もしていない彼女の体をイノセンスで焼いたんだろう?中々良い趣味してるけど、些か美しさに欠けるね」

「ぁぐ…!」

「ああ、君の声も美しさに欠けるなぁ。もっとゾクゾクするような悲鳴が聞きたいよ」



ずだん、とシェリルの足がトクサの折れた足を唐突に踏み付ける。
苦痛にその場に片膝を付くトクサの上に被さる、長く黒い影。



「それに今はラースラと話してるんだ。折角彼女が声をかけてくれたと言うのに、邪魔しないでくれるかな?」



切断された左腕の断面に、シェリルの指がずぶりと埋まった。



「ぁ、が…!ぁあ"…ッ!」

「うーん、その声はさっきよりマシかなぁ?いい音色してるね」



ぐりぐりと容赦なく肉を抉られ、トクサの悲鳴が濁った音を奏でる。
その断末魔を前に、ひくりと雪の喉が嚥下した。



「…なぃ…で…」






───パリ、






微弱な光が肌の上を滑る。



「ん?答えは出たかい?」



にこやかに問い掛けるシェリルに、向けた雪の表情は虚ろなまま。



「いじめ、ないで」



どんよりと暗い瞳の奥に、金色の波紋が浮かんだ。

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