My important place【D.Gray-man】
第10章 夢Ⅲ
にしても暗いなぁ…。
衣類調達を終えて病棟の倉庫を出た後、ひたひたと暗い病棟の廊下を一人進む。
朝方でも外はどんよりと重い暗雲が立ち込めてるから、夜と然程変わらない薄暗さ。
朝方だからか、この病棟だからか、今のところゾンビ化した誰かには出くわしてはいないけど…。
電気系統は相変わらず復旧していないみたいで、停電したまま。
昨日と変わらない教団内の雰囲気に、本当に生存者は私達二人だけなのかと不安になる。
…間違えた、生存者じゃなくて正常者でした。
「これじゃ神田と言ってることが一緒──」
──バンッ
「っ!?」
苦笑混じりに呟く声は、突如響く叩き付けるような音に遮られた。
思わず体は跳ねて、その場に固まる。
な、何…っ!?
慌てて辺りを伺っても、人影らしきものは見えない。
気の所為…な訳ない。はっきり聞こえたんだから。
「だ、誰か近くにいるのかな」
もし音の原因がゾンビ化した誰かなら。科学班や探索班のように一般的な団員なら逃れられても、エクソシストや元帥なら太刀打ちできない。
仕方ない、食料は諦めて早く神田の下に戻ろう。
そう思う前に、既に足は小走りで廊下を進んでいた。
辺りに気を配りながら進んでいたからか、それはすぐに視界に映り込んできた。
暗い病棟の廊下に続く、幾つもの窓。
其処に見えた、赤い点。
「…え」
小走りで進む視界は、段々とはっきり近付くそれを捉える。
そして正確に私の視界に映し出した。
赤い、人の手形を。