第4章 僕の風が今変わった
でも………
じゃあ、有希ちゃんは?
この三年の間、有希ちゃんについての状況は何も聞いていない。
僕から有希ちゃんを突き放したのだから敢えて調べる事もしなかったし、便りが無いのは良い知らせだとばかりに有希ちゃんは幸せに暮らしている筈だと勝手に自分を納得させていた。
だけど……一日足りとも有希ちゃんを忘れた事は無い。
今でも有希ちゃんの温もりや匂いが、鮮やかに僕の中に残っている。
そんな事を考えている僕の顔を見て、風間は全てお見通しだと言うように口の端を上げてから言った。
「だから……お前から預かった物を返しに来た。」
「僕が預けた物って……」
僕は風間に問い掛けたけど、そんなのは有希ちゃんの事だって分かり切っている。
「お前に仇成す奴等も、
これ迄の戦いの中で既に生きている者は少ないであろう。
それに生き残っていたとしても、蝦夷での最終決戦に向けて
もうお前に構っている余裕など無い筈だ。」
一瞬だけ風間の目に哀れみような色が浮かんだ。
「良くも悪くも……
お前はもう戦って死ぬ事は叶わぬのだ。」
自分だって理解していたつもりだったけど、でも風間の口からはっきりと告げられた事で何故だか逆に僕の心は憑き物が落ちたように軽くなった。