第12章 小休憩
「ゲンマさん、ゲンマさん!」
廊下をツカツカ歩く間、さゆに何度も名前を呼ばれたが返事をせず、ただただ進んでいった。
聞くな。
見るな。
さっきも今も、わかんないのは俺自身だ。
屋上まで出て、空を見たところでようやく落ち着いてきた。ああ、快晴じゃないか今日は。
「…ゲンマさん?」
心配そうに俺の顔を覗き込むその顔に例の夢がまたチラついた。
「……わかんねぇなぁ…」
「え…?」
繋いだ手には力は入っていないが解かれることはなくて、お互いの体温で少し熱くなっている。
ぼーっと、何も考えずさゆを見つめる。
俺はこいつのことをどう思っているんだろうか。
さっきから現在に至る行動は明らかな嫉妬だ。
でも、かといってだ。
それは本当に恋愛感情からきたものなのだろうか?カカシ上忍に言われたから元は別の感情をそう思っているだけなんじゃないか?
「わっかんねー…」
「私も訳わからないです。ホント大丈夫ですか?今日はもう帰ったほうが良いですよ。疲れてるんでしょう。」
私からも言ってあげますから、と手を引かれ、元来た道へ戻ろうとする。
「…どうなんだろうなぁ…」
「なんかもうこわいんですけど。ホント早く帰って寝てください。」
これは、さっきとはなんか逆だな。
自分より少し小さいその体を腕に収めたい。
ああ、これどうなんだ?
わからない。けれど、
「…もう少しだな。」
「え?」
さゆは俺の手を引いて歩きながら、少し面倒くさそうにこちらへ顔が向ける。
「わからない。わからないんだけどさ、あと少しでお前がいなくなったら寂しいだろうな。」
ピタリとさゆの動きが止まる。
「……寂しいですか?心配とかじゃなくて?」
「心配…?あぁ、まぁそうだな。お前は確かにわりかし強いけど、突然他国の奴が複数で攻撃してこともあるだろうし…」
「……」
ぼけーーっとしながら話す俺をさゆがまじまじと見てくる。
「…なんだよ…」
「いえ、そっかぁ、寂しいかぁ。」
小さくつぶやくように繰り返すと、段々とその顔が綻んでいく。