第22章 伏魔(ふくま)
鳴り響く警告音(音は想像に任せます)
そんな中、ふと目を閉じる
恵土『おい、ヴォルフ…』
ヴォルフ『なんだ、主』
体内で息衝く、意思を持つトリオンへ向けて
テレパシーを用いて、疎通を図っていた…
恵土『あの時…
誕生日に、一族の伝統で白い衣を着るのは解っている』
ヴォルフ『ああ。
それが、どうかしたのか?』
恵土『…あれが…
一体化したものの、なれの果てなんだろ?
あの後日、風呂場へ
秀次の背を流しに行った時に気付いたんだが
左手の甲に、風月流の印が刻まれていた…
僅かな光を放ちながら、紋章があって…』
ヴォルフ『…ああ』
恵土『…つまりは、お前と一体化しても
今まで通り同じだってことだよな?』
ヴォルフ『…』
恵土『言わなくたって解る…
お前の意思は私で、私の意思もまたお前だ。
本質的な所は変わってなくて
ただ、私を護り抜こうとする想いとで二分しただけだって。
私自身はどうしたって
いざ、どちらかを護らないといけないって時は
必ず人を護り抜くことだけに集中する。
一つだけにしか集中できない性格なんでな…
だからかな…
異常に息も気も合っていた…
後々考えてみて、今気付いたんだ…
父上や母上の、村の皆が託してくれた
私を護り抜いて欲しいって意思も込められていることに…』
ヴォルフ『!』
恵土『…だからさ…
悪いけれど、今ここで一体化してくれないか?
体内のトリオンと、体外のトリオン…
不平等だからって今まで私一人で早くやっていたわけだが…
今回ばかりは、同時にやらないと無理そうだ…
トリオンの回復だって
エネルギーやトリオンを感知するサイドエフェクトを発展させて生み出したものだ。
今まで、闇を押さえ込んだり
ハウンドで敵を仕留める時だけ頼ってきたが
今は緊急事態だ…
頼む。久しぶりに一体化させてくれ…
始祖神を復活させた、あの時のように…』
あの時とは…一体?