第42章 ファウル
ディスクオリファイング・ファウル
それはチームやコーチおよび関係者のファウルで、特に悪質なものをさし、宣告された場合は失格・退場となる厳しい罰則だ。
黄瀬は審判のように片手を挙げると、結の身体を抱え上げた。
「わ、っ!」
「じゃ、行くっスよ」
ポカンとする彼女に爽やかに笑い、「まさか、これで終わりだなんて思ってないよね?ホントは、このままココで延長戦とイきたいとこなんスけど」と手の中の柔肌をスルリと撫でる。
すでに回復しはじめた昂りが、反撃ののろしをあげるようにその質量を増すのを感じる。
男子更衣室のロッカーに置いたカバンの中の、オトコの慎みの出番が来たようだ。
「い、いえ。私はもう……退場になったので、遠慮しておこうかと」
「なぁに言ってんスか。オレ、お返しは忘れたことないんで」
「その誓いはコートで果たしてください」
「いやいや、ヤられっぱなしで終わりとかありえないっしょ?エースの本領発揮、といきますか!」
シャララとウインクし、語尾に音符がつきそうなくらいご機嫌な黄瀬を、結は下から軽く睨んだ。
「……基礎トレ、増やしますよ」
「バスケもエッチも体力勝負。望むところっスよ」
「うぐっ」と口ごもる可愛い恋人を、今日は隅々まで味わい尽くすことを今ここに誓う。
肘で器用にシャワーを止めて、心の中でひとり選手宣誓。
これから試合に臨む時のように「うっし!イくっスよ!」と気合いを入れると、黄瀬は髪の雫をふき飛ばすようにプルプルと頭を振った。
end