第5章 ヒルのウサギ
あれから数日がたった。
資料室からは何も盗まれていない事が分かり、ことは収まった。
ただ、私は"クモ男"が気にかかっていた。
『クモ男…。体制を低く保ち、音も立てずに任務をこなす姿、なんて聞いたことなかったな〜』
体制を低く保ち…
春雨には背が高い奴が多い。だから低い方が目に入りにくい……。
……………いやいや
『んなわけないよね〜。足元ぐらい皆みてるし』
じゃあ何で体制を低くする必要がある?
『うーん…』
ベッドの上でゴロゴロと転がりそのまま落ちた。ついでにPSPも落ちる。
んーーーー(怒)
やめだやめ!!頭がこんがらがる!!
PSPのソフトを変えるため、棚へ向かう。
次は音ゲーでもしようかな。
コトリと今のソフトを元に戻した。
『……』
音も立てずに任務をこなす…
何か足にでも仕掛けをつけて行動して………。
……………まてまて
『気配だけでも分かるでしょ…。』
じゃあ何で音を立てずに行動できるのに、シャッター音は消さずにこんな失態を犯した?
わっけわかんねェェェェ!!
PSPをソファの上へ放り投げ、またベッドへ倒れた。
深く深呼吸をして、うつ伏せになる。
『んんー』
10年前は何を盗んだんだろ。やっぱり春雨の歴史とか?お金?それとも武器?
どれを盗んでも価値があるものだらけの春雨。けれどセキュリティが万全なため、侵入するなんて本当に賢い人じゃないと………
バタァァァンンン!!!
『うぇっ!?』
いきなり出入り口の扉が音を立て吹っ飛んだ。
私はビックリして起き上がる。
『なになになに!!?扉吹っ飛んだんですけどッッ!!』
「サクラはその姿以外の服は持っていないのかい?」
……あ、でた。神威
予想はしてたけど!?ぽいなーっみたいな!?
『〜っあのねェ。ノックくらいしてよ…。それから扉吹っ飛ばすのは勘弁してください…』
顔見知りの人だったため、安心してまたベッドへ身体を埋めた。