第80章 再生の道へ
「班長…そ、その…」
「………」
スルーはできない。
しかしなんと声を掛けていいかもわからない。
握ってしまったリーバーの手を放せないまま、南は動揺混じりに口を開いた。
「あの………すみません…」
「…なんで謝るんだ」
「…無理に…色々、と…踏み込んでしまって…」
知らなかったリーバーの想い。
それは自分がずけずけと遠慮なしに、その心へと踏み込んでしまったからだろうか。
なかったことにしてくれ、と言った彼は、恐らく伝える気などなかったのだろう。
それを引き出させてしまったのは自分かもしれない。
罪悪感はある。
しかしリーバーを支えたいと思ったのは、彼を恋愛対象として見ていたからではない。
それだけははっきりわかることだと、南は緊張気味にぐっと唇を引き締めた。
「班長の心を、荒らすつもりはありません…でも…支えていたいって言ったのは…本心です。そこに疾しい気持ちなんてないです。…だから…その…なかったことには、できなくて……ごめんなさい。融通が利かなくて」
「………」
辿々しく、しゅんと肩を落として伝えてくる。
悪いと思っているのだろう。
それでも向き合おうとしてくる南の姿を目に、リーバーはまたも片手で顔をぺちりと覆った。
「は、班長…?」
「………」
(…そうだ。南はそういう奴だった)
大事な時には、きちんと目を向けて向き合おうとする。
小さな体で、大きな心を持つ彼女。
(だから惚れたんだろーが)
勿論それが全ての理由ではないけれど。
確かに彼女に惹かれたものの一つ。