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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



「…傍にいてくれ。何もしなくてもいいから…生きて、傍に───」

「いますよ。…一方的に寄りかかるだけじゃ嫌だから、自分にできることをしようと思います。大したことはできないかもしれないけど…書類の整理くらいなら手伝えますから」



あと徹夜用のコーヒーを淹れること、と付け足せば、くすりとリーバーの口元が笑う。
そんな些細な変化に、南の胸に広がる安堵の感情。
いつもどんな時も頼り甲斐があって、その広い背中を見つめ続けていた。
そんなリーバーの高い目線は、今は同じ高さにあって、瞬きの音さえ聞こえそうな程すぐ傍にある。

服の上から感じる体温。
耳に届く微かな呼吸音。
普段滅多に聞かない弱い声さえも、今のリーバーを形作るものの一つで。

生きている。

目の前の命の存在を感じながら、自然と南は微笑んでいた。



「………」



浸るように目を瞑り、口元には優しい笑み。
小さな手を回して抱き付いているのに、まるで抱きしめられているかのような抱擁感。
そんな南の存在を前に、リーバーもまた自然と体に力が込められていた。

死なないと、真っ直ぐに自分を見て意志を示してくれた。
子供のように泣きじゃくる弱い彼女の姿を知っているはずなのに、自分よりも遥かに強く感じた心。
大きな安心感と、愛おしさのようなものが入り混じる。



「…南、」

「はい」



願わくば。
自分の漏らした弱い本音が、受け応えてくれた彼女の言葉が、現実になればいいと。
実現して欲しいと強く思った。

生きていて欲しい。
自分の隣で、共に地に足を付けて立ち。
そうして、今みたいに笑っていてくれたら。






「───好きだ」






他には何も要らないと、そう思った。

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