第41章 交換条件
「とりあえず、怪我の手当てと着る物だな」
「それなら私が洋服を用意するねっ」
呟いた班長の言葉に、即座に反応したのはリナリーだった。
両手を合わせて言うその顔は、なんだか楽しそう。
本当に子供が好きなんだろうなぁ。
「怪我の手当てなら、僕が医務室に連れて行きましょうか?」
非番だし、と付け加えて提案してくれるアレンはありがたかったけど。
…婦長さんのことを思い出すと思わず体が竦む。
絶対に、また余計な薬作ってって…科学班のこと怒られる。
絶対、また怒られる。
般若みたいな顔して怒られる。
怖いんです、婦長さん。
「ああ、いや。これくらいの手当てなら、此処の救急箱で事足りるから。ありがとな、アレン」
…え?
予想外の言葉に思わず声の主を見る。
すると間近にあるその薄いグレーの目は、私を見て僅かに苦笑した。
……もしかして、怖がってたの気付いた…?
「………」
なんだか嬉しいのと気恥ずかしいのとが両方で、思わず班長の肩に手を掛けたまま俯いた。
…顔、近いんですって。