第2章 いずれ僕らに追い付くサヨナラ (ディグレ)ラビ夢
彼にはどちらにしろ戦場で死ぬのなら、どこでも構わないという風にとっただろう。実際その通りだ。けれど、秋良はラビではその言葉を受け取ると怒るに決まっている、と思っていた。
だが、少し違うようだった。
ラビはそばまで寄ってきて座り込む。そして、伸ばしていた秋良の手を強くつかむ。
「ならさー」
そこで大きな風が吹き込む。ラビがなにかしゃべったような気がしたが、秋良には届かなかった。
「で、どうさ?」
にらむようにこちらを見ている。ラビは心なしか顔が赤くなっているように思う。でも、表情はこわばっていていつものラビらしくない。何か重要なことを言ったのだろうか? 秋良は困惑して聞き取れた言葉で内容を解析しようとしたが無理だった。
「ごめんなさい」
ラビの表情が一気に硬くなる。それでも秋良は続けた。
「ラビなんて言ったの? 風で聞こえなかった!」
するとこわばっていた表情が柔らくなり大笑いし始める。状況についていけない秋良は困った顔でラビを見つめている。ラビは笑い終わり息を吐いた。
「あぁ、オレかっこわるー」
秋良は首をかしげるばかりだ。
「ラビ! もう一回!」
「嫌さ!」
「お願い! 後生だから!」
上目づかいで聞いてみるとラビは頭を抱える。
「それ、反則」
「え?」
意味が分からずキョトンとする秋良にラビは顔を近づける。
「文句言うなよ」
「え……? んッ!」
触れるだけの優しいキスだった。あまりのことに驚いて声も出ない秋良に、ラビは苦笑いしている。
そして硬直している秋良の耳元に唇を寄せてささやいた。
「死ぬなら一緒に、だ」
ラビの顔を見ようにも強く抱き寄せられていて動けない。意味にやっと気がついて目を見開く。そしてまなじりに涙が浮かんだ。
「……ありがとう、ラビ」
秋良も彼を強く抱きしめた。秋良たちにもいずれさよならがやってくるだろう。でもその時に笑って死んで行けたらいいなと心から願った。