第16章 赤い夫との甘い夜
「なんでお前はキスをする時にそんなに緊張したような顔になるんだい?」
『なんかそんな顔になる』
「お陰でとてもやりにくくなるのだが」
『……すいません』
「ほら……ん」
征十郎は目をつぶった。
『は?』
「ほら、早くしろ。時間が無い」
『あー。もうはいはい。色々とすいませんでした!』
私は心底謝ってからゆっくりと征十郎の顔へと近づけて征十郎の女子みたいな唇に口付けた。
そしてゆっくりと離れると同時に征十郎の目が開く。
「よし。じゃあ帰ろうか」
『案外サラッとしてるよね』
「切り替えが早いと言ってくれ」
『わかりましたよ。社長様』
「…………日本に帰った時に覚えておけ」
『すいませんでした』
私はベッドの上でスライディング土下座を繰り広げた。
「くすっ。ほら美桜行くぞ」
征十郎は口に弧を描きながら、私に手を差し出した。
『うん』
私はその大きく、暖かい手をそっと握った。
帰宅するとメイドさんや執事さんに散々心配をされたのは言うまでもない。そして、執事さんから事情を聞いたお義父さんの何か企んでいるような顔も一生忘れないと心に誓った私だった。
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