第11章 11
唐突な報告に驚き、顔をあげて朝日奈さんを見つめた。
彼は穏やかな顔をしている。
「もう、小説は書かないんですか?」
「そんなことはない。方向性を変えるだけ。なんだかんだで危険だったし、守りたいものもできた」
そう言って朝日奈さんは目を伏せて、私の手をとった。
「俺はさくらに謝らなくちゃならない。
俺はずっと、さくらを透かして昔好きだった人を見ていたんだ。ずっとあの人の代わりをさくらに求めてた。ごめん」
握る手に力がこもる。
「でも、さくらと話すうちに、どんどん惹かれて行った。自分でも気づかないうちにね。まじめなところ、一生懸命なところ、花のような笑顔。今では全部が愛おしい」
伏せていた目が私の目を捉える。
こんなにまっすぐ見つめられたのははじめてだ。
「愛してる。ずっとそばにいてほしい」