第16章 【番外編】➕てぃあー
「私は…きたないんですっ!」
だんっ、とビールのジョッキを叩きつけて澤木。
「及川さんが誰かに触れるだけで、悲しくて、おかしくなります。及川さんの過去なんか全部消えて、私だけ残ったら良いのにって思ってるんです!」
そろそろ家にいるだろうという時間にメッセージを送ると、いつもなら用事をしながらでとびとびになるリプライが早いので、理由を尋ねれば、
『今日は及川さんがいないんです』――。
まだ食べていなかったら一緒に夕飯でもどうかと誘うと、一も二もなく彼女はやって来る。
成人した人間が二人いればまあ、酒も入ろうというもので。
夕飯と銘打ちながら、炭水化物はまだ日の目を見そうに無い。