第12章 アビリティー
「・・・じゃあ、あれか?
その幼馴染みが現れない限り・・・お前は正式にパートナーを組む事も、名を上げる事も無いって言いたいのか」
『・・・・・・それは、正直解らないや』
「・・・あ?」
『・・・みんなと曲作るのは、もちろん楽しいよ。
アイドルとして名を上げるのは置いといて、みんなの作曲家としてなら・・・有名になりたい、かも』
「・・・・・・ちっ」
『・・・あれ、なんで今の空気で舌打ち?』
砂月くんが不機嫌になったのか、盛大な舌打ちをしてきた。
・・・私なんか気に障る事言ったかな。
「バカか。那月も、あいつらも・・・お前と一緒に上を目指したいと思ってるに決まってんだろ。むしろ、お前と一緒じゃなきゃ意味が無いんだよ。
・・・だからお前と仮パートナーなんて中途半端な関係で我慢してるんだろうが」
『・・・そうだと嬉しいな』
「・・・・・・つーか、お前気づいてねえのかよ」
『ん?』
「あいつら、・・・・・・・・・あー・・・なんでもねえ。
説明すんのも面倒だしな」
『え、なに気になる』
「うぜえ」
『ひどっ』
〝仮〟パートナーって関係を我慢してくれてる、か・・・。
それにしても砂月くんって聞き上手だな・・・。
誰にも言うつもり無かったのに、言っちゃったよ。うーん・・・これは日向先生よりも相談相手の素質あるかもしれない。・・・あ、日向先生は日向先生で聞き上手だよ?
私が粗方話し終えると、砂月くんが何か言いかけてやめた。
・・・言いかけてやめるとか気になるなあ。
「・・・那月がまだガキの頃。
あのチビとも出会ってねえ頃だよ。
俺って言う人格が生まれたのは」
『チビ・・・来栖くんの事だよね』
「ああ。
・・・・・・那月には、お前で言う幼馴染みみたいなヴィオラの先生が居たんだ。
・・・那月もその女の事が大好きだった。恋愛感情とかじゃなくて、ただ大好きだったんだ」
砂浜に引いては寄るを繰り返す波の音をバックに砂月くんの話に耳を傾ける。
砂月くんの表情は、どこか辛そうだったけど・・・それと同時にやっぱりどこか寂しそうだった。