第19章 バースデー・サービス 前編
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「座って。」
秀星くんの言葉で、ベッドに腰掛ける。前のこともあるから、ドキドキしてる。また秀星くんに触ってもらえるかもって、期待している私もいる。秀星くんも、ベッドに腰掛けた。
「んじゃ、まずは悠里ちゃんからキスしてよ。」
「え?」
「「え?」じゃないでしょ。悠里ちゃんから言ったんじゃん。サービスする、って。」
少し口を尖らせながら言う秀星くんが可愛いとかはさておいて、恥ずかしい。言われてから、するのって、なんか、こう……。
「あ、場所はどこでもいいよ?まだ1回目だし。」
ということは、まだ何か言うつもりなのか……。想像すると、もっと恥ずかしいので、考えるのはこの辺りでやめておく。
「うん……。」
言われた通り、秀星くんに唇を落とす。場所は髪。サラサラしたその感触に、触れてみたいと思っていたから。
「んっ……。」
秀星くんから漏れる吐息が、色っぽい。幼い顔立ちなのに、それに反するかのように艶を含んだ声。ゾクリとした。
「じゃあ、次は、ココ。」
秀星くんは、人差し指で自分の下唇の辺りを、トントンと叩いた。その姿はぼんやりとした照明の下で、ひどく扇情的だった。
「あ……」
「してよ。悠里ちゃんから。」
これは、緊張する。でも、秀星くんが喜んでくれるのなら。
「目、閉じてよ……。」
「いーよ。」
秀星くんは、すっと目を閉じた。思ったよりも長い睫毛。目を開けているときよりも、ずっと無防備な秀星くんの姿。私は、秀星くんの両頬に、そっと手を添えた。私の指先が震えているのが、自分でも分かった。
音もなく、自分の唇を、秀星くんの唇に触れさせる。
「――――――……、これで、いい?」
「ん……」
想像してたよりも、ずっと恥ずかしい。でも、秀星くんは満足そうに笑った。
「じゃあ、次。」
「ま、まだあるの……?」
思わず口走っていた。でも、秀星くんの答えは単純明快だった。
「うん、まだ。」
「え……。」
「サービス、頑張るんでしょ?じゃあ、もっとシてよ?」
さっき私が勢いに任せて言ってしまったことが、秀星くんの唇で復唱される。それが、妙に恥ずかしい。しかも、自分で言ったことだから、ある程度責任持たなきゃって思ってしまうじゃない……。
「う、うん……。」